厳密に言いますとリマスター仕様ではございませんが、CD用のマスターテープの音質精度を高めたものの模様でございます。
リマスターとなると、CDの特徴に合わせて音を調節・強調する感がございます。解像度が増すものの、音の輪郭が角ばったり、鋭すぎる音造りになる事があり、賛否両論に分かれるものもございます。
(オーディオ機器によっては耳に痛いものとなる事も..........................)
されど、ここでは古いものではございますが非常に良心的な音質となっております。
内容は言わずもがな。
ラインナップは第二期、Andy Powell(G、Vo)、名手Laurie Wisefield(G、Vo ex-Home)、Martin Turner(B、L-
Vo)、Steve Upton(Ds)となります。
ゲストにPete Wood(Key)、コーラス隊の参加がございます。
プロデュースはかの故Tom Dowd(The Allman Brothers Band、Lynard Skynard、Rod Stewart、Derek & the Dominos、Eric Clapton等手掛ける)となります。
1975年米国・ニューヨーク”Atlantic Studios”での制作となります。
アメリカに活動拠点を移して二作目となる作品でございます。
後に登場するThin Lizzy、Judas Priest、Iron Maiden等々に代表されるツインリード・ギターバンドのルーツとして知られるブリティッシュ・ロックバンドでございます。
ブリティッシュ・ブルーズ/ロック系に絡む音楽性ではございますが、ブリティッシュ・フォーク系のメロディアスさが強い事がミソでございます。
ブリティッシュ・ロック特有のルーツ音楽解釈やアマチュア感覚が伴う音楽性でもございますが、ハードロックでもプログレッシヴ・ロックでもない当時独特の
ロック音楽
未分化時代出身の興味深さがございます。
アメリカ進出後は試行錯誤的ではありながらも、アメリカ指向の
大陸系ロック色の
音楽性に以前のメロディアスさの形を変え加えた感がございます。
但し、今作では前作に引き続き”初期Eagles”的なフォーク/ロック系メロディアスさを
強調した感がございますが、ヴォーカル/コーラス面を強調したメロウ感がございます。
リズム隊はジャズ系の影響が強かった初期とは異なりロック色が強いものではございますが、演奏の細やかさを残したもの。
音楽性もそれを前提としたもの。
初期のブリティッシュ・トラッド/フォーク的な繊細さとは異なり、アメリカン・カントリー/フォーク的な泥臭さと垢抜けた感のあるメロディアスさの融合したものとなっております。
ツインリード・ギターの有り方は従来とは異なる感があり、
”
初期Eagles”的な感覚を加えたものとなっております。
双方共にフォーク/ロック的な感覚が強いバンドでございますが、(英米の音楽文化の違いが有れど)その共通する”フォーク”感を融合した感がございます。
質は高かったものの試行錯誤気味だったLaurie Wisefield加入後米国進出期作品の中では一番米国色が濃い作品ではございますが、楽曲も(米国指向とは言え)魅力的な楽曲が揃います。
前作から指向していた”初期Eagles”的な楽曲もございます。
米国指向とは言えど、やはり英国のバンド。
メロディアスさは泥臭さの中でも独特なものでございます。
(プロデューサーが同じ事から)アメリカ進出後大成功を収めたこの時代のRod Stewartの感覚にも
通じる感がございます。
米国進出後の米国色の濃い音楽性
とも呼ばれる作品でございます...................................
(後のかのNWOBHM勃興への息吹を感じたからでしょうか?)次作後に拠点を英国に戻す事となりますが、今作は米国進出期のピークという
感のある作品でもございます...................................
リリース後は不評。
(質は高いものの)アメリカナイズされ過ぎたとの批判や素朴さや朴訥さが売りでもある
バンドの
ヴォーカル/コーラス個性が(今作で指向した音楽性において)仇となった感があり、また母国英国での不評が”Identity Crisis”を齎し音楽性を修正する事となり、
英国回帰的な次作傑作”New England”を生み出す事となります.................
ギタリストの相次ぐ脱退(Eric Bell、Gary Moore)に頭を悩ませていたトリオ時代Thin Lizzyの頭脳Phil Lynottがギタリスト二名を加入させればどちらが抜けても大丈夫であろうとツインリード・ギター構想を思いついた事は知られておりますが。
そのツインリード・ギターを要する音楽性への変貌に関しては、このWishbone Ashをかなり参考にしていた感がございます........................................よりメロディを強調したものとなっておりますが.........................
この時代は両者ともに米国進出を目論む事もあり、音楽性に共通する感覚がございます............................................
またEaglesを手掛けるプロデューサーBill Szymczykがアメリカ進出後Wishbone Ashの前作制作に携わっており、
その後に手掛けたEaglesの大傑作”Hotel California”とりわけタイトル曲後半のDon Felder/Joe Walshのツインリード・ギター・ソロの有り方の参考にしたのでは?とも言われます.....................................................................
この紙ジャケット仕様限定盤は入手が非常に困難。この機会に是非。