厳密に言いますとリマスター仕様ではございませんが、CD用マスターテープの音質精度を高めたものの模様でございます。
リマスターとなると、CDの特徴に合わせて音を調節・強調する感がございます。
解像度が増すものの、音の輪郭が角ばったり、鋭すぎる音造りになる事があり、賛否両論に分かれるものもございます。
(オーディオ機器によっては耳に痛いものとなる事も..........................)
されど、ここでは古いものではございますが非常に良心的な音質となっております。
内容は言わずもがな。
ラインナップは第二期名手揃い。
Andy Powell(G
/mandolin/
Vo)、名手Laurie Wisefield(G/Steel G/Banjo/Vo ex-Home)、Martin Turner(B/L-
Vo)、Steve Upton(Ds)となります。
ゲストにAlbhy Galuten(Key、後に映画音楽制作等で名声を成す)、Nelson Falco Padron(Conga)の参加がございます。
プロデュースはかのBill Szymczyk(Eagles等手掛ける)となります。
1974年8~9月米国フロリダ州マイアミ”Criteria Recording Studios”での制作となります。
(後に登場するThin Lizzy、Judas Priest、Iron Maiden等々に代表されるツインリード・ギターバンドのルーツとして知られるBritish Rock Band。
British Blues/Rock系に絡む音楽性ではございますが、British Folk系のメロディアスさが強い事がミソ。
British rock特有のルーツ音楽解釈やアマチュア感覚が伴う音楽性でもございますが、
HR/HMでもProgressive Rockでもない当時独特のロック音楽未分化時代出身の興味深さがございます)
バンド活動が好評で
(決して大きくは無いものの)
成功を収めていたものの、ツアー/創作活動に疲弊したTed Turnerが呆気なく脱退。
評価が高かったものの商業的な成功は収められず其の上ビジネス問題(特に著作権)で活動が困難となり解散した”Home”から、
Laurie Wisefieldをスカウト。
新体制が発足する事となります。
されど当時は”Art/Rock Movement”が(大作主義系大傑作が出揃った)1974年を最後の輝きとして終焉という時期。
急激にその関心が失われ、そして同時期に勃興した”Punk/New Wave”台頭が始まる事となります。
英国での活動が急激に縮小する事となり、
米国での活動の足掛かりがある
中堅バンド等は活動拠点を移す事を検討し始め、その
”Wishbone Ash”が行動に移す事となり
ます...............
さて今作。
アメリカに活動拠点を移して初となる作品でございます。
アメリカ進出期は試行錯誤的ではありながらも、米国指向
大陸系ロックに繋がる
音楽性に以前のメロディアスさの形を変え加えた感。
今作では”初期Eagles”的なフォーク/ロック系メロディアスさを加えた
感。
(プロデューサーの意向という感が窺えるものでございますが......................)
リズム隊はジャズ系の影響が強かった初期とは異なりロック色が強いものではございますが、演奏の細やかさを残したもの。
音楽性もそれを前提としたもの。
初期のBritish Trad/Folk的な繊細さを引き継ぎつつも、American Country/Folk Rock的な泥臭さと躍動感を融合したものとなっております。
ツインリード・ギターの有り方は従来とは若干異なる感があり、
”
初期Eagles”的な感覚を加えた感。
双方共にFolk/Rock的な感覚が強いバンドでございますが、(英米音楽文化の違いが有れど)その共通する”Folk”感を融合した感がございます。
質は高かったものの試行錯誤気味だったLaurie Wisefield加入後米国進出期作品の中では
(米国志向とは言え)
英国音楽寄り。
楽曲には
”初期Eagles”的な楽曲もございますが、
魅力的な楽曲が揃います。
米国指向とは言えど、やはり英国のバンド。
メロディアスさは独特なものでございます。
(プロデューサーが同じ事や米国活動地盤から来る商業性から)”初期Eagles”的な感覚を感じるものではございますが.........................
リリース後は英国では(以前程では無いにせよ)評価が高いもの。
されど(質は高いものの)アメリカナイズされたとの批判。
米国系プロ志向(特にヴォーカル/コーラス)の作品制作の有り方とバンド音楽性特有の英国的素朴さのギャップが
仇となった感があり、
(当時の活動基盤たる)米国では評価が以前より下回るという皮肉。
(前作”Wishbone Ash Ⅳ”で得たカナダ/オーストラリアでのチャート・アクションも................................)
素朴さや朴訥さが売りでもある
バンドの
ヴォーカル/コーラス個性が、
プロデューサーBill Szymczykが求める”Eagles”的なプロ感覚のそれと相容れなかった感が有り、そこが評価を分けたという感がございます。
今作リリース後はツアーに勤しみますが..................................
今作の微妙な評価が影を落とし音楽性の有り方で迷いが生じ、”Identity Crisis”に苛まれていく事となります.................................
ギタリストの相次ぐ脱退(Eric Bell、Gary Moore)に頭を悩ませていたトリオ時代Thin Lizzyの頭脳Phil Lynottが、
ギタリスト二名を加入させればどちらが抜けても大丈夫であろうとツインリード・ギター構想を思いついた事は知られております。
そのツインリード・ギターを要する音楽性への変貌に関しては、このWishbone Ashをかなり参考にしていた感がございます....................
よりメロディを強調したものとなっておりますが.........................
この時代は両者ともに米国進出を目論む事もあり、音楽性に共通する感覚がございます............................................
またプロデューサーBill Szymczykが”
Eagles”作品制作を
当時メインに
手掛けているというもの。
今作制作後に手掛けた”Eagles”大傑作”Hotel California”。
とりわけタイトル曲後半の名手コンビDon Felder/Joe Walshのツインリード・ギター・ソロの有り方の参考にしたのでは?とも..............
非常に興味深い事実でございます..........................................
この紙ジャケット仕様限定盤は入手が非常に困難。この機会に是非。