未開封品ではございますが、輸入盤
ケース
特有のブックレット支え部による
ジャケット
傷みがございます。
リマスターが為されておりますが、そもそも今作が安普請での制作というもの。
そもそもの音質には限界がございますが、良心的な音質となっております。
内容は言わずもがな。
ラインナップは名手揃い、Mark Edwards(Ds、B-vo、ex-Steeler
)、Kal Swan(Vo、ex-Tytan)、Doug Aldrich(G&B-vo、後にHurricane、House of Lordsセッション、Burning Rain、Whitesnake他)、
Jerry Best(B、B-vo、
後にFreaks of Nature)
となります。
ゲストとしてRick Seratte(Key/Programming&B-Vo、後にWhitesnakeツアー・サポート、Bad Moon Rising制作・ツアー参加)等がございます。
プロデュースはバンド自身、エンジニアはAlan Isaacs(かのKeel、L.A.Metal/Metal Blade関連?)となります。
1988年米国カリフォルニア州ヴァンナイス”Sound City Studios”での制作となります。
そもそもはMark EdwardsとKal Swanとの邂逅から始まるバンドでございます。
テキサス州出身の名手Mark Edwardsは活動拠点をL.A.移行後にかのRon Keelと”Steeler”を結成。ファンジン、アンダーグラウンド界隈で非常に注目を浴びていたスウェーデン在住のかの名手Yngwie J.Malmsteenの加入を画策。
されど米国入国管理局から就労ビザの許可が下りず、大卒でもあるMark Edwardsは管理局に「文化的に非常に重要な価値がある」
と一計を案じ折衝。
(その後の米国中心としたハイテク・ギタリストブームそしてその経済波及効果を鑑みれば見事な判断と貢献)
何とか許可を得てL.A.に呼び寄せ加入させ作品を制作するもそれぞれの音楽性等のソリが合わず、数回のライヴにて崩壊。
その後”M I”で教鞭を取りつつセッション・ワークに勤しむ傍らに自己のリーダーバンド結成を画策。
NWOBHM中期に登場した英国の”Tytan”の音源を聴いたMark EdwardsはKal Swanにアプローチ。L.A.で新バンド結成を持ちかけます。
またKal SwanはNWOBHM中期にかの名バンドAngelwitch人脈で知られる”Tytan”のヴォーカリストとして表舞台に登場。
かの”Polydor”との契約を得、デビュー制作に勤しむもLes Binks(Ds、ex-Judas Priest)が制作中にギャラの問題で離脱。
Simon Wright(ex-AⅡZ、後にAC/DC、Dio)を加入させ完成させるものの、
12インチ盤リリースのみで契約解除(後に再販レーベルよりリリース)の憂き目に遭い、あっけなく解散。
Mark Edwardsからのアプローチに乗り、既にシーンの中心が米国に移行した英国に見切りを付け
L.A.移住を決意、となります。
当時L.A.を活動拠点としていたかのJohn Sloman(Vo、ex-Lonestar、Uriah Heep、後にGary Moore/Paul Young
ツアーメンバー他)との接点があったMark EdwardsはKal Swanと共に
既に拠点を移していたその
英国通受け名バンド”Lonestar”のギタリストだったTony Smithのプロジェクト”Lyon”と合流。
新体制となりバンド名を”Lion”と変更する事となります。
”Tytan”を手掛けたWil Reid Dick(Thin Lizzyの”Last Life”等手掛ける)や
Mark Edwardsの”M I”人脈から当時はジャズ/フュージョン系としても知られた名手故Ronnie Montrose(ex-Montrose、Gamma、Tony Williams等)を
プロデュースに起用し
デモ制作(後に日本のみで作品化)を行うもレコード会社は興味を示さず、ラインナップは流動的と化しTony Smithは離脱する事となります。
(後にTony Smithは”Lyon”名義で再びバンド結成し、英国界隈で活動の模様)
残されたEdwards/Swanは紆余曲折の後にDoug Aldrich、Jerry Bestを獲得し、ラインナップが固定。本格的に活動する事となります。
Atlanticの資金を得てかのDuane Baron(Ozzy Osbourne、L.A.GUNS、Dream Theater等手掛ける)共同プロデュースにてデモを制作(後に日本のみで作品化)するも契約には至らずまたCBSからのアプローチも同様の結果となるも、
かの”Survivor
”で知られるScotti Brothersが契約に乗り出し、デビュー作制作に乗り出す事となります。
(但し、デビュー作の内容に反して非常な安普請制作だった模様。ドラム録音にも手間取る程の制作スタジオの狭さ..................ここに金銭に絡むマネージメント問題がある感が......................................)
日本でかなりの好評を呼び、傑作の呼び声高い作品に仕上がるものの、時代はスラッシュメタル全盛期そしてグランジ/オルタナの息吹が聞こえると言う時期。
シーンに興味はなく、おまけにマネージメント問題に絡む契約問題から活動は非常に限られたものとなり、今作のみで契約解除。
また不本意ながらも前述のデモ録音編集作「Powerlove」が日本のみでリリースされ好評を呼ぶものの、活動はままならず停滞。
その後、そのデモ録音を米国国内で発売したいと独立系レーベル”Grand Slam”がバンド側にアプローチ。
されど「マスター紛失」の為、「
デモ楽曲再アレンジ+新曲」という変則的新作に企画変更し制作に取り掛かる
.................................という非常に面倒な経緯がございます.................................
さて今作。
正直、「ミニアルバム”Powerlove”マスター紛失」は言い訳の感(非常に近い時期に日本発売されていますし..........)。
米国再発企画が持ち込まれた際、「あんなもの(デモ録音)を発売するなら新作を作らせて欲しい
」とバンド側は望んだ筈。
そこで策士たる名手Mark Edwardsが一計を案じ「マスター紛失」と偽証し企画変更を目論んだ、という感がございます。
(何せかのRon Keelと”Steeler”結成時にスウェーデン在住で引き籠り状態の名手Yngwie J.Malmsteenを加入させる為、一計を案じ入国管理局を説得。
就労ビザを発給させ
た方でございますし.........)
正直、前作同様に愚直なまでに正統系でメジャー感のある洗練されたメロディアスさを伴うハードな音楽性でございます。
英国系且つ正統系L.A.Metal系の音楽性を融合した感のある音楽性で非常に英国的な叙情性を強く持ち合わせており、また洗練度が非常に強く大人向けではあるものの色彩感が強いメロディ感覚があるというもの。
非常にメジャー感があり、クラブ規模というよりはホール/アリーナ規模を想定したスケール感のあるもの。
演奏アンサンブルも前作以上に非常な纏まりを見せており、演奏個性が非常に調和が取れたもので非常に躍動感に溢れたもの。コーラスも非常に印象的。
楽曲も前作以上に非常に練られたもので展開の有り方もスムースで自然。
L.A.界隈での登場であるものの非常に希少な音楽性を誇るバンドは前作同様でございます。
また前作同様に
安普請ではあるものの、録音は良心的。
但し、前作の加工品的なものではないもので、ライヴ感が強い
音造り
がミソでございます。
演奏個性も前作よりも明らかに向上し、非常な纏まりと細やかさが感じられるもの。
名手Mark Edwardsは言わずもがなでございますが前作では大人しいという感があった演奏ではございますが、今作ではハイハット/シンバル/タム・ワーク等々名手振りが窺えるもの。
前作では本格的レコーディング初経験が二名バンドにいるという事で気を遣った感が窺えるものでございましたが、その二名がキャリアを積んだ事で安心して個性を打ち出したという感がございます。
また名手Mark Edwardsはかの”M I”で講師を当時勤めていた事から技術のみならず理論的な指導(特定の音楽に対する技術含めたアプローチの有り方等)を行っていた筈で、
その細かい応用系手本を披露したという感がございます。
面目躍如そして留飲を下げた、とでも申しましょうか............
初の本格的なレコーディングを経てキャリアを積んだDoug Aldrichのソロワークは見事なもの。
若干素人臭さ(Doug Aldritch特有の個性とも言えますが........)が感じられますが、応用性を加えて格段の向上が窺えるもの。
八十年代的なハイテク感を生かしつつメロディアスさを基とした組み立ては前作同様に見事で(正確なピッキングも加え)後の活躍が伺えるものでございます。
独特で音楽性共に素人臭さがあった”Tytan”に比べ
Kal Swanのヴォーカルは前作同様に水を得た魚の如く非常に伸びやかで力強いもの。
プロ感の強いバンドの中で実力発揮ではございますが、前作よりの表現力の幅が広がった感がございます。
Jerry Bestはコーラスワークでの貢献が目立ちますが、フレーズのセンスも前作同様良いもの。
キャリアを積んだ事で演奏の幅が広がった感がございますが、
かの”Duran Duran”や”Powerstation”の名手John Taylorと似たシンプルな演奏感覚の感が窺えるものでございます。
安定度があり、個性が強めのラインナップでそれぞれの個性を繋ぐという感のあるもの。
かのLed Zeppelinの名手John Paul Jones曰くの「自分まで個性を強く出してしまえばバンドの音楽が崩壊するから、一線を退いて個性を出していった」という感覚が伺える感がございます。
ゲストではございますが後にWhitesnake等ツアーに駆り出される等名を馳せる名手Rick Seratteのキーボードワークにも注目。
前作のPat Reganとは異なる
オーケストレーション演奏ではございますが、空間を広げスケール感を加えバンドの演奏・アンサンブルを立てる演奏は見事で技術的な裏付けが感じられるもの。
八十年代特有の感覚はございますがあの異様で過剰な煌びやかさは音質共に上手く抑えられており、また鍵盤捌きや音色の選択に非凡なものが感じられるものでございます。
(かの歴史的名手Tony Banks(Genesis
)とまではいきませんが、音のタピスリー感が窺えるものでございます)
バックコーラスも兼任しツアーにも同行しており、バンドコーラス隊の要という感がございます。
(演奏同様に背景にアカデミック感が感じられるもので、バンド・コーラス面の技術指導も担当していた感が..................................)
名手Mark Edwardsの演奏は本領発揮という感がございますが...........................
(そもそもの個性という感がございますが.....)Doug Aldrichのリフワークがちと単純過ぎる、
コーラスの要たるJerry Bestのベース演奏がシンプル(やはりGlenn HughesではなくJohn Taylorが手本という感が.........)、
Kal Swanのヴォーカルは声量があり非常に安定し前作よりも表現力が向上しているものの、声域が中低音中心でメロディ面の色彩が限られる(ちと大雑把気味の表現力も.......)等々、
細かいパーツの問題が確かにございますが、マイナーレーベルでのリリースにしては高品質というもの。
何とかならなかったのだろうか、との感が強くございますが、
ここにこのバンドに常に付きまとった金銭に絡むマネージメント問題が見え隠れする感がございます....................................
当初は米国のみのリリースではあったものの、バンドに対する反響は強いもので早い時期に今作の日本リリースが決まり、再来日公演
を行ない非常な好評を得るものの状況は好転せず、
また時代はスラッシュ・メタル全盛期にオルタナ/グランジの台頭という反八十年代色に染まりつつあるという時代。
契約問題が絡み解散の二文字がバンドに圧し掛かる事となります................
そしてモトクロス事故による名手Mark Edwardsの重傷そしてミュージシャンとしての道を断念。様々なビジネストラブルを経て解散。
Swan/Aldrichは”Bad Moon Rising”(名前のセンスが何だかねぇ...............)結成し音楽性を変化させつつ三作制作。
その解散後はKal Swanはマネージメント業に、Doug Aldrichは”Burning Rain”を結成そしてかのDavid Coverdaleからのアプローチから”Whitesnake
”に参加云々とバンド唯一の活動経歴を誇り、
Jerry BestはMike Trampの新バンド”Freaks of Nature”の結成に参加。
名手Mark Edwardsは表舞台をひっそりと去る事となります......................................
バンドの解散は免れなかった模様でございますが、(
件の事故がないとの前提ですが.....)”Edwards/Swan”体制が継続出来ていればという感がございます。
似た時期に”Steeler”同僚のRon Keel率いる”Keel”より音楽性のメロディアス/ポピュラー面をになった感のある名手Marc Ferrariが脱退。
後に隠れ名バンド”Cold Sweat”を結成致しますが、この名手Marc Ferrariがこの”Edwards/Swan”体制に合流していれば.......................との感がございます.......................................
正直、(バンドや音楽性、作品共に)もう少し早く登場していれば.................................という感がございます..........................................................
さて、ボーナス楽曲。
日本のみでリリースされたデモ録音集「Powerlove」6曲でございます。
かの故Duane Baron(後にOzzy Osbourne、Dream Theater、L.A.GUNS等手掛ける)制作で資金提供の”Atlantic”向けに制作されたEdwards/Swan/Aldritch/Best”編成での”Powerlove”が冒頭に登場致しますが、
前述のEdwards/Swan/Tony Smith/Alex Campbell時代のデモ録音を中心としたもの。
元AngelWitchでTytan時代の同僚Kevin Riddle等の参加や
かの故Ronnie Montroseプロデュースによるデモ等々非常に興味深い録音でございます。
但し、あくまでデモ録音。
契約が獲得出来なかった時代という残酷な現実が窺えるものでございます。
正直、「Trouble in Angel City」での洗練された完成ヴァージョンに軍配が挙がりますが、
原曲にも非常な魅力が感じられるもの。
NWOBHM(.....というかの”Tytan”の音楽性)を引き摺った音楽性で垢抜けない感覚がございますが、何とかならなかったのだろうか.......という感がございます....................
この”Lion”というバンドに常に付き纏った問題ではございますが.....................................
この機会に是非。
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